会長あいさつ



日本ペドロジー学会・会長 櫻井 克年

 ペドロジーとは、土壌学の一分野であり、土壌の生成、分類および調査に関する研究分野です。「日本ペドロジー学会」は、ペドロジーの発展と知識の普及をはかり、自由な討論の場をつくることを目的としています。1957年に、当学会の前身となる「ペドロジスト懇談会」が発足し、現在の名称へは1995年に変更されました。

 いわゆる農学、環境学、生態学などの研究者で、フィールド調査を含む自然科学研究や実践に携わる人たちは総じて、「土壌」を非常に重要な環境条件(環境因子)と捉えています。しかし、実際のところ、「土壌」はブラックボックス的な扱いを受けることが多いのも事実です。それは、「土壌」が気候、母材、地形、生物、時間、という5つもの要素の相互作用のもとで生成してきたこと、さらに、人間がそれを利用することで大きく改変されることなど、「土壌」を理解するためには広範囲の基礎知識とそれを総合化する創造力を要するからです。ペドロジストはその領域に挑み続けている研究者ということになります。

 日本ペドロジー学会では、会誌の発行、野外巡検、学会大会、ペドロジスト養成事業、出版事業、統一的土壌分類体系の確立などの事業を行っています。なかでも、当学会の大きな特徴のひとつは、各地の土壌断面を訪ねる野外巡検の実施です。ペドロジーの基本は、地面に掘った穴や道路脇の露頭などで、土壌の垂直的な形態を観察する土壌断面調査にあります。なぜなら、土壌断面にはその土壌が生成してきた歴史が刻み込まれているからです。もちろん、付近の地形や地質、土地利用などの景観についても重要なヒントとなります。ペドロジスト達は、土壌断面を前にその歴史を読み解くことに飽くなき情熱を燃やします。

野外巡検において、学会員が断面を前にその成因について侃々諤々(かんかんがくがく)議論するのが恒例となっています。巡検先はさまざまで、日本国内にとどまらず、2005年には台湾、2009年にはカナダにおいても実施されました。さらに、土壌断面を調査する機会として、1991年からペドロジストトレーニングコースを年1回実施しています。当事業は、土壌調査法を習得することを目的としており、土壌学を専攻する大学生や土壌を担当される農林業試験場職員、コンサルタントなど民間の方々の参加を得、毎回好評を得ています。2014年からは、この事業をさらに発展させ、日本各地の代表的な土壌の断面を5年程度で通覧できるように調査地を選定しましたので、今後にご期待ください。

2013年12月に行われた国連総会において、2015年を国際土壌年(International Year of Soil, 2015: IYS2015)とする決議文が採択されました。適切な土壌管理が各国の持続的発展に不可欠であり、その必要性の社会的認知を高めることが喫緊の課題であると認識されたからです。当学会でもIYS2015を契機に、土壌の重要性を広く知ってもらうさまざまな活動を展開中です。これからも積極的な情報発信に努めますので、みなさまからの幅広いフォローをお待ちしております。