会長あいさつ

日本ペドロジー学会 会長 田村 憲司

 ペドロジーとは、土壌学の基礎的分野であり、土壌の生成・分類・調査に関する研究分野です。「日本ペドロジー学会」は、ペドロジーの発展と知識の普及をはかり、自由な討論の場をつくることを目的として、1957年に創設され、60年を超える歴史を持つ学会です。

 「土壌」と聞くと、一般的には、グラウンドの土、花壇の土、植木鉢の中の土を思い浮かべる方がほとんどかもしれません。土壌を物質としてとらえて、または、植物生育にとっての培地のように、環境因子の一つとして考えています。ペドロジーでは、土壌を、母材・気候・生物・地形・年代・人為といった土壌生成因子の総合的な相互作用によって生成される歴史的自然体としてとらえています。自然界において土壌は独自の形態・性質・機能を持っています。このような自然体としての土壌を土壌体(soil body)と呼んでいます。土壌体を認識するためには、1mほどの深さの土壌断面を詳しく調べることから始まります。ペドロジー学会では、土壌断面にこだわりを持ち、また熱い情熱を持った、ペドロジストといわれる人たちが多数参加されています。会誌「ペドロジスト」の発行、年次大会、野外巡検、ペドロジスト・トレーニングコースなどの活動を通じて、ペドロジーに関する研究成果の発表、研究交流、若手の育成事業など、ペドロジーの発展、普及・啓発を促進しています。 

 自然物を対象にしている学問では、その基礎となるのが分類学です。研究対象としているものが何という名前のどのような分類群に属しているものなのかがわからないものを対象として研究を進めていくことはできません。分類体系の確立は土壌についても非常に重要なことです。ペドロジー学会では、その前身の「ペドロジスト懇談会」の頃より、土壌の分類・命名について検討を重ねて参りました。1963年に日本土壌型分類・命名委員会が発足して以来、我が国の土壌分類体系確立を目指して活動を続けており、1986年に「日本の統一的土壌分類体系(第一次案)」が、2002年に「日本の統一的土壌分類体系-第二次案(2002)」が発表され、2017年4月に、「日本土壌分類体系」をようやく発表することができました。この分類体系が最終的なものではなく、更新し続けて、より高い完成度の分類体系としていく必要があり、日本ペドロジー学会は、完成度の高い分類体系を目指してこれからも取り組み続けていかなければならないと思っています。

 年次大会とともに開催しているシンポジウムは、1962年の第1回から2018年には第57回となりました。ペドロジーの最重要課題である生成や分類をテーマにしたものに加え、教育にも焦点を当てたシンポジウムを開催してきました。2000年には、「わが国の失われつつある土壌の保全をめざして~レッド・データ土壌の保全~」と題した公開シンポジウムを開催し、レッドデータ土壌の保全を強く訴え、環境アセスメントの中に保全すべき土壌を位置づけることができました。また、2015年には、国連の国際土壌年を記念して、シンポジウム「ペドロジーの挑戦 −土・ヒト・社会− 国際土壌年2015を越えて」を開催し、以来、広く、普及啓発活動を推進しています。土壌の保全管理、持続的利用のために一般の人たちへの普及啓発活動は今後さらに重要となっていくものと思われます。会員の皆様の学会活動へのご理解とともに積極的な参画をお願いする次第です。
 
 ホームページをご覧になり、ペドロジーへ関心を持たれた皆様、是非、日本ペドロジー学会に、また、学会が主催する行事へのご参加をお持ちしています。